今 敏

ちょっと情報が遅いですが、アニメ映画監督の「今 敏(こんさとし 46歳)」さんが24日に永眠されました。

アニメ映画をよく見る人なら知っているかもしれません。
「東京ゴッドファーザーズ」「妄想代理人」とかの監督をしていました。

自身のWEBサイトでは、遺書ともいえる記事がありました。
http://konstone.s-kon.net/modules/notebook/archives/565

題名は「さようなら」。

結構長い文章ですが、自分は一気に読んでしまいました。
その中から自分的に気になった部分を、今回はご紹介したいと思います。

まず、映画監督という事もあるのか、文章表現が非常に具体的な内容でありながら、イメージ的というか。
呼んでいる人の心にリアルに入ってくる感じがあります。

忘れもしない今年の5月18日。
武蔵野赤十字病院、循環器科の医師から次のような宣告を受けた。
「膵臓ガン末期、骨の随所に転移あり。余命長くて半年」

自分は、ERとかの医療ドラマが見るの好きなんで、多少医療用語とか、知識を知っているんですが、他の癌に比べて、すい臓癌の生存率って極端に少ないんですよね。
確か転移がものすごい早くて、わかった時には体中に転移している状態が多いとか。
急に告げられる「余命半年」の言葉。
自分の場合を考えたとき、いったいどういう行動を起こすか、想像も出来ません。

宣告の後、生き延びるための方法を妻と模索してきた。それこそ必死だ。
頼もしい友人や強力この上ない方の支援も得てきた。抗ガン剤は拒否し、世間一般とは少々異なる世界観を信じて生きようとした。

死ぬと分かっていた時、少しでも生き延びる可能性のある行動をするのは、誰しもすることだと思います。
それを、抗がん剤とかの医療にすがるか、宗教などの科学に頼らない行動をするか。
自分も相当迷うと思います。
でも今敏さんの、この言葉に答えはあると思いました。

「自分の選んだ世界観で生き延びてやろうじゃないか!」

名言過ぎますね。
「自分」を突き通す事が重要なんだと、改めて思いました。

ただ、現実は厳しく、あらゆる手段をしても症状は改善されなかったそうです。
半分は生きたく、半分は死を受け入れている。
今敏さんは、その死の準備をします。

死ぬとわかった時、何をするか。
家族や友人などのお世話になった人に会ったり、財産の整理をしたり。

それらが終わったとき、今敏さんは、こう思ったそうです。

「はぁ…やっと死ねる」

すべてを悟ったような言葉ですね。

この後、肺炎を併発して入院する事になります。
医者からは、

「持って…一日二日……これを越えても今月いっぱいくらいでしょう」

死が寸前にせまった時、今敏さんは次の行動を起こします。

私は自宅で死にたい。

自分も、もし家族がいたりしたら、病院で死ぬより、住み慣れた場所で死にたいという気持ち、大変分かりますね。
死ぬときだからこそ、当たり前に過ごしてきた状況で死にたいと思う気持ちが分かりすぎて辛いです。

この時一番死を意識したという今敏さん。

しかし、自宅に帰ってから肺炎の山を乗り越えたそうです。
失礼な表現かもしれまえんが、ドラマのように綺麗に終焉を向かえるという事がいかなく、今敏さんも拍子抜けされたのか、以下の言葉を残しています。

「死にそびれたか(笑)」

(笑)を付けるくらい、こんな気楽な気持ちになれるのかなw
たぶん、リアルに死を感じているのと、本当に死ぬのかっていう現実感のなさが、交差しているんでしょうね。

神からのお告げなのか、生きる時間を少し与えられた今敏さんは、以下の事を思います。

生きる気力が再起動したからには、ぼんやりしているわけにはいかない。
エクストラで与えられたような命だと肝に命じて、大事に使わねばならない。
そこで現世に残した不義理を一つでも減らしたいと思った。

今敏さんが言う不義理とは、「お世話になった人達に申し訳無く思っている事」。
そこで、お世話になった人達に会いたいと思ったそうですが、それにも葛藤があったようです。

出来れば一目会いたい人はたくさんいるが(会いたくないのもいるけれど)、会えば「この人ともう会えなくなるんだな」という思いばかりが溜まっていきそうで、上手く死を迎えられなくなってしまいそうな気がした。

回復されたとはいえ私に残る気力はわずかで、会うにはよほどの覚悟がいる。会いたい人ほど会うのがつらい。皮肉な話だ。
それに、骨への転移への影響で下半身が麻痺してほぼ寝たきりになり、痩せ細った姿を見られたくもなかった。多くの知り合いの中で元気な頃の今 敏を覚えていて欲しいと思った。

元気な姿を見てきた人にっとて、病でやせ細って死を向かえる人に会うのは、どんな人でも衝撃を受けると思います。
それは死を向かえる人側からしても、そうです。
こういう状況、すごく伝わりますね。
会いたいけど、会えない辛さ。
きついです。

そんな葛藤と闘っている今敏さんですが、それでも会いたい人がいました。
「両親とマッドハウス丸山さん」でした。

マッドハウス丸山さんが、会いに来たときの一幕が以下です。

自宅に見舞いに来てくれた丸山さんの顔を見た途端、流れ出る涙と情けない気持ちが止めどなかった。
「すいません、こんな姿になってしまいました…」
丸山さんは何も言わず、顔を振り両手を握ってくれた。

一番の心残りは映画「夢みる機械」のことだ。

丸山さんに「夢みる機械」の懸念を伝えると、
「大丈夫。なんとでもするから心配ない」

やばいっすね。
泣けます。

自分も小学校5年生の時に、交通事故に会って、1ヶ月くらい入院したいんですが、その時に担任の先生がお見舞いに来てくれたんです。
事故直後、親と会っても泣かなかったけど、何か先生と会った時に、申し訳ない気持ちと、嬉しかった気持ちが溢れて、泣いてしまった事を思い出しました。
自分の場合は、死ぬわけでは無かったけど、他人に心配される状況になって、初めて他人の気持ちを知るみたいな感覚と思います。
死を向かえた状況では、なおさら本当の気持ちが伝わります。

そして、今の今まで両親に伝えてなかった今敏さん。
両親にここで電話で伝えます。

「オレ、膵臓ガン末期でもうすぐ死ぬから。お父さんとお母さんの子供に生まれて来て本当に良かった。ありがとう」

こういう時って、実際これくらいシンプルな伝え方になるんでしょうかね。
いつも通りの話し方で、そしてそっと最後にお礼を言う。
でも、いつも通りを強がって装っているようで、辛い気持ちになります。

そして両親と実際に会うことになります。
そこで母から言われた一言。

「ごめんねぇ!丈夫に産んでやれなくて!」
何も言えなかった。

言えないですよね。
自分が死んでしまう事に、責任を感じているなんていう言葉を言われたら。

そして最も身近で、最もお世話になった人、「妻」に対してはこう書いています。

最後に、誰よりも気がかりで、けれど最後まで頼りになってくれた妻へ。
あの余命宣告以来何度も二人で涙にくれた。お互い、身体的にも精神的にも過酷な毎日だった。言葉にすることなんて出来ないくらい。
でも、そんなしんどくも切ない日々を何とか越えて来られたのは、あの宣告後すぐに言ってくれた力強い言葉のおかげだと私は思っている。
「私、最後までちゃんと伴走するからね」

強いですね。
本当大変な状況だったのは想像出来ます。
それを一緒に支えて来たんですから、まさしく夫婦しか出来ない事ですね。

最後に、今敏さんは以下の言葉をみなさんに残しました。

さて、ここまで長々とこの文章におつき合いしてくれた皆さん、どうもありがとう。
世界中に存する善きものすべてに感謝したい気持ちと共に、筆をおくことにしよう。

じゃ、お先に。

最後の「じゃ、お先に」が、何か今敏さんらしいというか。
自分を通しているというか。

遺書って、人生長く生きている中で、そう何度も見る機会は無いと思います。
死を間近にしている人の言葉って、どんな小説やドラマよりも、リアルで説得力があって心に響きます。

そして、いつか来る死を実感させて貰え、それに対してどう自分が行動するかを考えさせられるものでもあります。

自分は、死に対する恐怖心はもちろんありますが、暗くなるんじゃなくて、明るく死んでいきたいと思いますね。
今敏さんが言った「じゃ、お先に」が言えるくらいに。

そのためには、自分を通して後悔しない生き方をしないと駄目なんだろうなぁと、改めて思いさせられました。

何か、えらく長くなってしまい、なんでこんな真面目な内容書いているんじゃいって感じですが、久しぶりに感動した事だったので、お伝えしたくなりました。

今回は要所を抜粋しましたが、みなさんもぜひ全文を読んでみてください。
心に響きます。

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  • コメント (6)
    • セフィロス
    • 2010年 8月27日 18:33

    どもーー

    僕は母親がもう死んでいるので少しわかる気がします。

      • 大関@管理人
      • 2010年 8月29日 11:16

      どもです。
      そうなんですかぁ・・・。
      色々苦労ありそうですね。
      自分の両親はもう結構年なんで、そういう時期が来ると思うと、これまた辛いですねぇ。

    • 雷舞
    • 2010年 8月28日 12:53

    1週間前ほどから、アニメ製作会社「マッドハウス」関係の監督さんが亡くなられたという、
    噂が広まっていましたが、まさか・・・今さんだとは…。
    何と言ったらいいのか、本当に残念です・・・・・・。

    今さんの作品は、ほとんど見ています。「千年女優」は、
    CATVでやっていたのをチラッと見ただけなので、今度借りてきてシッカリと見たいと思います。

    自分の中で好きなのは、「東京ゴットファーザーズ」ですね、
    WOWOWで放送していたのを、親と見ました。あの”奇跡”に感動と笑いを貰いました♪

    そしてそして、なんという運命か偶然か必然かはわかりませんが、
    ついこの前、WOWOWで放送されていた今敏初監督作品「PERFECT BLUE」を録画していた物を、
    見ました・・・。そう、見終わった後、PCを起動し、情報サイトを読んでいたら、
    今監督の訃報の記事が・・・・・・。もうねぇ、うーん、なんでしょうね、これは。

    「さようなら」を読み、最近まで更新されていたTwitterを見て、
    言葉が出ませんでした、”これから”という人が逝ってしまい、
    本当に…本当に残念でなりません。。。

    遺作となる(?)「夢見る機械」が私の住む富山で放映されたら、必ず見に行きます!!!

    ・・・・・・

    本当に残念です、
    そして、
    素晴らしいアニメ作品を作り出していただいて感謝感激です。

      • 大関@管理人
      • 2010年 8月29日 11:16

      どもでっす。
      わいも東京ゴッドファーザーズは記憶に強く残っていますね。
      観終わった後の感動と言ったら、忘れません。
      あれほど気持ちがよく終わったアニメ映画も多くは無いと思います。

      知らないで観ていた作品の後に、訃報を知るとショックですよね。
      運命を感じるというか、知っていて観ていたのとは、また違うショックを感じると思います。

      Twitterも、あえて病気の事は感じさせないように、つぶやいたそうですね。
      そういう事出来るって、相当強い人じゃないと出来ないと思います。

      わいも、夢みる機械観に行きたいと思いましたね。

    • ねこみみ
    • 2010年 8月29日 22:20

    今敏さんのこと、知りませんでした。
    このブログを読んで、今さんのこと、病気のこと、そして亡くなったことを知りました。

    最近は癌告知は普通にしますよね。
    以前は教えないように教えないようにしてたけど・・・
    今は患者が治療の選択をする時代ですもんね!

    死の受容までの5段階の経過のことを思い出しました。
    こんなにすっきりとした文章ですが、その裏には心身ともに辛い時もあったと思います。

    でもここまでの文章を残せるなんて、すばらしいですね!
    まわりの支えももちろん大事でしょうし、普段からの自分の生き方というか・・・
    考えさせられました。
    大関さんがおっしゃる通り、後悔しない生き方を私も考えてみよう・・・
    このブログを読まなければ、今敏さんのこと知らなかったと思います。
    ありがとうございました^-^ 

      • 大関@管理人
      • 2010年 8月30日 14:20

      どもで~っす。
      今敏さんの事は、映画を見てちょっと知っていたくらいなんですよね。
      でもアニメ映画って結構狭い業界なんで、有名な監督とかは少ないし、記憶には残っていました。

      がん告知、確かに昔は言わないままってのが多かったですねぇ。
      ドラマとかでも、そういうのが題材になったりして。
      やはり、ねこみみさんが言うように、治療方法が多くなってきたのと、より人権を尊重する時代になったという事でしょうかね。

      「死の受容までの5段階」。気になったので調べてみたら、キューブラーロス博士「死の受容への五段階」ってやつなんですね。
      否認→怒り→取引→抑うつ→受容
      という5段階で死を受け入れるってやつですか。

      この内容だけを読むと、かなり重い雰囲気ですが、今敏さんは表面だけ見ると明るい受け取り方に見えますよね。
      でも見えない部分で、実際はこの5段階を考えているとも思えます。
      絶対誰しも考えそうですもん。

      それらを乗り越えての、このBlogの記事だったりするんでしょう。
      本当強い方です。

      わいもこの記事で、ねこみみさんを始め色々な人と、話せたのでありがとうと言いたいです。

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